組合運営Q&A[持分]
持分
[Q19]持分払い戻し方法変更のための定款変更の議決方法について
持分全額払い戻し制をとる組合が、出資額限度の払い戻し方法に変更する場合は、組合員にとっては既得権の放棄を意味するので、総会における定款変更決議とは別に組合員全員の同意が必要ではないか。
[Answer 19]
持分の払い戻し方法に関する定款変更については、中小企業等協同組合法第53条による特別議決をもって足り、特に組合員全員の同意は要しないものと考える。
すなわち、中小企業等協同組合法第53条において定款変更は特別議決によること、また持分払戻しに関して同法第20条に「定款の定めるところにより、その持分の全部又は一部の払戻を請求することができる」と規定するだけであり、中小企業等協同組合法上組合員全員の同意を要する規定がないことを根拠として、通常の定款変更の手続きで足るものと考える。
なお、持分については、既得権たる財産権と考える見解のほか、脱退等により現実化する潜在的な期待権とする見解もあるので、本件については、組合員全員の同意を得ることは好ましいことではあるが、現行法上は特別議決をもって足りるとする見解は中小企業庁においても採用しているものである。
[Q20]持分の譲渡について(一)
中小企業等協同組合法によれば、組合員はその持分の譲渡について組合の承諾を得なければならないこととなっているが、承諾の決定は総会に諮る必要があるか。 また、持分の譲受人が組合員でないときは加入の例によらなければならないこととなっているが、加入の例によるとは、どの範囲を意味するのか。
[Answer 20]
持分譲渡の承諾は、業務の執行に属すると考えられるので、加入の承諾の場合と同様に理事会で決定すれば足りるものと考える。
「加入の例による」とは、加入の場合に準じて取り扱うということであるから、譲受人は組合員たる資格を有する者であって、かつ、その持分を譲り受けると同時に組合に加入する意思を有していなければならないことになる。
また、組合の側においては、その譲渡の承諾にあたっては、正当な理由がなければこれを拒否し、または承諾に際して不当に困難な条件を付してはならない。
[Q21]持分の譲渡について(二)
持分を譲り受けて組合に加入しようとする者からも加入金を徴収する定めをしてもよいか。
[Answer 21]
加入金は持分調整金としての性格を有するものであるので、持分譲受加入の場合には徴収できないと考えられる。
なぜならば、持分譲受加入の場合には、出資の払込手続を必要としないので、定款に定めた出資一口金額とこれに応ずる持分額との調整を行なう必要が生じないからである。
[Q22]脱退者に対する持分の分割払戻しについて
組合員が脱退した場合、脱退者の持分全額を一時に払い戻すことは組合の資金繰りがつかず組合運営に支障をきたすことが考えられるが、持分の払い戻しを年賦払いとすることの定款変更は可能か。
[Answer 22]
持分を一時に全額支払うことが組合の事業運営に重大な支障をきたす場合においては、定款で定めれば、その一部に限り(例えば出資額を限度として)払い戻すことができる。
持ち分の全額払い戻しの場合も同様の理由から定款上分割払いを規定することは可能と考える。
しかし、分割払いによって不当に脱退が制限されるべきではなく、1回の払戻金額、賦払期間が合理的に定められる必要がある。
この場合、どの程度までの分割払いが合理的かは具体的事情に即して判断されるべきものであるが、中小企業等協同組合法上出資払込みにつき分割払いの際、第1回の払込金額は出資1口の金額の4分の1以上としていることから、第1回払戻額が出資額の4分の1以上であれば合理的といい得るものと考える。
ただし、分割払いにより脱退を不当に制限しないという趣旨から、年賦払いの場合、一般的水準の金利を支払うことが適当と考える。
なお、払い戻しの方法(1回の払戻額、賦払い期間等)は具体的には定款で定めるべきものと考える。
[Q23]脱退組合員の持分債権の保全処分について
組合員Bが倒産し、その債権者Aより組合に債務者であるBの持分を支払停止命令(裁判所より)してきた。 そのため、組合は当年末決算において持分算出をしたが、支払いを中止組合にて保管しているが、その処置をいかにすべきか。
- 仮に組合が、この差押え該当部分を組合外に処分するためにはどのような手続きが必要か。
- 債務者Bの持分払戻請求権は、仮差押えのため、中小企業等協同組合法第21条(時効)には該当しないものと思われるがどうか。
[Answer 23]
-
組合に対してなされた保全処分(仮差押)は、法定手続きにしたがい有効に執行されたものであるから、この場合、組合は供託等による持分払戻金の組合外への処分の道はない。
したがって、債権者AがBとの間の本訴を提起して、転付命令または取立命令を得て直接請求してくるか、また債務者Bが仮差押を取消して組合に請求してくるのを待つより他に方法はないと考える。
なぜなら、組合は持分払戻金を保管することにつきなんらの不利益を受けるものではなく当該仮差押におよんだAB間の訴訟上の当事者たる資格を有しているからである。 -
債権者Aが仮差押したことが、民法にいう時効中断事由に該当するかどうかについては、学説、判例に争いがあり、判例は債務者Bの有する第三債務者(組合)に対する債権をその債権者Aが差押えても、その債権(持分払戻請求権)の消滅時効の進行はそれによって中断しないものとしており、したがって、この場合には仮差押のあるなしにかかわらず2年で時効が完成することになる。
学説は判例の立場に反対で、この場合の差押も債権消滅時効の中断事由になるとするのが一般で、この場合は、請求権は時効にかかわらず、依然存在することになる。
[Q24]持分払戻方法を変更した場合の新定款の効力について
脱退者に対する持分を全額払い戻しから出資額限度に定款変更するための臨時総会が適法に開催され、当該事業年度にこの変更が認可された場合において、次の者に対する持分の払い戻しに関する定款の適用については、どのように解釈すべきか。
- 臨時総会で反対を唱え、受け入れられなかったため脱退を予告した組合員
- 死亡等による法定脱退者
[Answer 24]
- 自由脱退の場合は、脱退を予告した組合員といえども事業年度の終了日までは、組合員たる地位を失っていないし、組合に対する権利義務も他の組合員と同様に有しているのであるから、年度途中で変更のあった場合でも、変更後の定款によって持分の払戻しを行なうこととなる。
- 死亡等による法定脱退の場合は、組合員の意思にかかわらず法定された事由に該当するに至ったときただちに組合員たる地位および権利を失うのであるから、持分の払戻しはその脱退の時点において効力を有していた定款に準拠すべきであると考える。