組合運営Q&A[出資・出資金]
出資・出資金
[Q8]員外者の出資について
中小企業等協同組合法には組合員以外の者が組合に出資してはいけないという禁止規定はないが絶対にいけないものか。
[Answer 8]
組合員は一口以上の出資を有しなければならないということは、中小企業等協同組合法第10条に規定するところであり、その出資額を限度として責任を負うものであることも同条第4項に規定するところである。 さらに事業協同組合とは組合員が相互扶助の精神に基づき協同して事業を行なうため組織されたものであるから、これらを総合して考えるならば、組合は組合員のためのものであり、員外者が出資するということはあり得ない。
[Q9]組合の債務に対する組合員の責任について
- 組合の借入金、買掛金等の対外債務に対する組合員の負うべき責任の限度については、出資金を限度とする有限責任は絶対的なものか。 例えば、総会において、各自の出資金以上の金額を負担すべきことを決議した場合、この決議は有効であるか。 上記に関して貸付金、売掛金等の未回収のため、借入金等の返済不能を生じた場合、責任は誰が負い債権の追及はどこまで及ぶか。
- 赤字累積による清算の場合はどうか。
[Answer 9]
-
組合がその事業の遂行上、債務を負い、かつ、その弁済が不能となった場合において、組合員が負うべき責任は、その出資額を限度とし、総会その他の決議をもってしても、これを超える責任を負わせることはできないものと考える(中小企業等協同組合法第10条第4項)。
なお、組合が資金を組合員に貸付けた場合や組合が物品を組合員に販売した場合等における組合と組合員間の債権債務関係については、出資とは関係なく、組合に対して債務を負っている組合員は、弁済の責に任じなければならない。
また、組合の第三者に対する債務について全部または一部の組合員が連帯保証をしている場合、その保証をした組合員は、個人的に無限に責任を負うことになる。
したがって、組合員に対して出資額以上の責任を負わせること等を総会において決議し、決議をもって負担させることは、法令違反であるから無効である。 -
組合財産をもって債務を完済するに足りない場合において、解散をし、または破産の宣告を受けたときも、組合員の責任は、上述の組合と同様である。
なお、総会の決議であることをもって組合員に限度額以上の負担を強制することはできないが、自主的意思によって負担しようとすることを阻止するものではない。
[Q10]総会における増資決議の効力について
組合の自己資本充実を図るため、今後5年間は配当金を出資金に振り当てるために積み立てることを総会において決議した。 この決議は、以後においても効力を有し、以後5年間の配当金は自動的に組合の積立金となるものと考えてよいか。
[Answer 10]
設問の総会の決議は今後一定期間の組合の方針あるいは計画を議決した程度にとどまると思われ、その範囲において全組合員を拘束するものと考えられる。
しかし、実際の出資金充当のための積み立てについては各組合員は必ずしもこれに拘束されるというものではない。
すなわち、組合員の責任は、その出資額を限度とするものであり、増資の引受けについても、たとえ総会の決議をもってしても組合員を強制することはできないからである。
したがって、以後の処置としては、各年度に組合員の承諾を得る必要はないが、当初において各組合員別に承諾を得ることが必要である。
[Q11]組合出資の差押えについて
債権者である「組合員A」の申請により、裁判所より組合に対して、債務者たる「組合員B」の組合出資金について「債権差押え並びに転付命令」が発せられた。
- 組合員Bの持分と組合員資格はどうなるか。
- 差押えた持分または出資証券が競売される事態に組合員Bが脱退もしくは譲渡を認めない場合。
- 前項において、組合員Bが譲渡を認めた場合、組合がそれを承認しないとき。
[Answer 11]
- 債務者Bの組合員資格は喪失するものでなく、ただ組合よりの配当金取得ができなくなるだけであり、組合員Bの持分が変わるものではない。 したがって、組合員Bが脱退し、持分払い戻しのできる事態にならない限り転付命令が発せられることには疑問がある。
- 組合員が脱退または譲渡を認めない限り、債権者たる組合員AはBの出資あるいは持分を取得または承継することはできない。 なお、組合の出資証券は有価証券でなく、単に出資したことを証する書面であるから、当然競売ということはあり得ない。
- 中小企業等協同組合法第17条によって、持分の譲渡は組合が承認しない限りできないので、たとえ組合員が譲渡を承認したとしても譲渡は行ない得ないことになる。
[Q12]出資証券の質入れ、担保について
事業協同組合の出資証券は、組合の承認があれば金融機関等に質入れ・担保ができるか。
[Answer 12]
組合出資証券の質入れを禁止する法律規定は何もないので、質入れは可能であるが、出資証券は自由に譲渡できず、それ自体換金価値を有する有価証券ではないので、質権の対象物たり得る価値はほとんど有していない。 したがって組合としては、これに承諾を与えないことを原則とすべきと考える。
[Q13]出資証券紛失の際の取扱いについて
組合員が出資証券を紛失した場合、どのような手続きをしたらよいか。
[Answer 13]
出資証券は、市場性を有する証券ではないから、一般の有価証券と同様に取扱う必要はなく、組合員より紛失届を提出させ、それにより組合は新たに証券を再交付するだけでよい。
[Q14]行方不明組合員の出資金整理について
組合員が行方不明となった場合、出資金の整理はどのようにすべきか。
[Answer 14]
出資を整理するには、当該組合員が組合を脱退することが前提となり、設問の場合は資格喪失による脱退または除名による強制脱退が考えられる。
もし行方不明と同時に事業を廃止しているのであれば、資格喪失として処理することが可能と考える。
この場合、組合員たる資格が喪失したことを理事会において確認した旨を議事録にとどめると同時に、内容証明郵便をもって持分払戻請求権の発生した旨の通知を行なうことが適当と考える。
除名は総会の決議を要し、この場合除名しようとする組合員に対する通知、弁明の機会の賦与等の手続きが必要であるが、組合員に対する通知は組合員の届出住所にすれば足り、この通知は通常到達すべきであったときに到達したものとみなされる。
弁明の機会の賦与については、その組合員が総会に出席せず弁明を行なわない場合は、その組合員は弁明の権利を放棄したものとみなされ、除名決議の効力を妨げるものではない。
なお、除名が確定した場合は、資格喪失の場合と同様の通知をするのが適当である。以上の手続きにより、当該組合員に持分払戻請求権が発生するが、その請求権は2年間で時効により消滅するので、時効まで未払持分として処理し、時効成立をまってこれを雑収入または債務免除益に振替えるのが適当と考える。